Alfonso Cuarón "Gravity"

"You should see the sun shining on the Ganges.  It's amazing..."
ガンジス川に昇る太陽を見てみろよ。すごい眺めだ...」

Alfonso Cuarón (アルフォンス・キュアロン)監督の映画"Gravity"は邦題が「ゼロ・グラビティ」となっていて,意味が逆になっている。確かに映画の大半が地球上空の宇宙空間で展開されるので,必ずしも映画の中身を反映していないというわけではないが,これでは監督や製作者の意図が正しく伝わらないのではないか? 映画を最後まで見れば,タイトルが「無重力」ではなく,「重力」でなければならないのかということがよくわかる。映画が終わってエンドロールの一番最初にタイトルの"GRAVITY"が映し出されるところからも明らかだ。映画の冒頭で「宇宙では生命は存在できない」("Life in space is impossible")と語られるように,この映画では宇宙を死,地球を生のイメージで捉えている。幼い娘を事故で亡くして以来,人生に意味を見いだせなくなっているライアン・ストーン(サンドラ・ブロック)がマット・コワルスキー(ジョージ・クルーニー)の助けを借りて,宇宙空間での壮絶な試練を経て地球に生還し,精神的な再生を遂げるという物語で,神話や宗教的イニシエーションの説話構造を踏まえて構築されている。映像だけに目を奪われるのではなく,細かいところにも注意して見るべき映画で,再度見直すと,一度みただけでは気付かなかったところや見落としているところが明らかになるような気がする。

"Gravity" Official Trailer