Whitney Houston, Material/Memories

"First of all, I want to tell you that I love you all. Second, I would like to say, I love you, Whitney. The hardest thing for me to do is to come on this stage." - Bobby Brown

Pitchforkのウェブサイトhttp://pitchfork.com/news/45401-rip-whitney-houston/を見ていたら、R.I.P.の文字とともに、ホイットニー・ヒューストンの顔写真が飛び込んできました。一瞬?と思ったのですが、次の瞬間、「えっ?」となり、そうか亡くなったのか、ということを認識するのに数秒かかってしまいました。享年48歳。死因は不明で、滞在中のホテルの部屋で息を引き取ったそうです。

1980年代中盤から90年代にかけて、数多くのヒット曲があり、好きで聞いていたというわけではないのですが、よくかかっていたような気がします。"I Will Always Love You"とか、"I Wanna Dance With Somebody"のサビの部分とか、強烈に耳に残ってますね。午後から、YouTubeで代表的な曲をいくつか見返していたのですが、さすがにちょっとくどい感じがしました。確かに歌はうまいんですが、何かちょっとやりすぎというか、演技過剰なところが、聞いていて疲れます。先行する世代のアレサ・フランクリンティナ・ターナー、シャカ・カーンなどを聞いていても、不自然で作為的なところは感じないのですが。AP通信の記事http://news.yahoo.com/whitney-houston-superstar-records-films-dies-005927033.htmlには、ホイットニーは、「ポップシンガーとして、メインストリームで売れるために、黒人のルーツを捨てた」、つまり売れるために多数派の白人大衆に媚たのだ、という批判があったということを伝えています。本人もこの批判を気にしていたのでしょうが、自分の出自と、音楽ビジネスでの成功を天秤にかけて、どちらを取るかというところで二重に引き裂かれていたのではないでしょうか。ボビー・ブラウンとの結婚も、問題だらけでうまくいかず、ドラッグに溺れていたこともあり、ここ10年位は、それまでに比べると、ヒット曲も減り、以前のような輝きを失ってたようで失ってしまっていたようです。

日本語でも死亡記事がかなり出始めていますが、海外のものにくらべると、表面的であり、音楽的な評価まで掘り下げてかいているような記事は今のところ見当たりませんね。まあ、日本のメディアなんて所詮その程度のものでしょう。「死亡に事件性なし」と書いた某新聞もありましたし。さすがに海外は違っていて、Pitchforkのような普段はあまりメインストリームのミュージシャンを取り上げないメディアが、敬意を表してRest In Peace (安らかに眠れ)という記事を載せていました。AP通信の記事も読みごたえがありました。でも、この記事全文訳して載せる日本の新聞は残念ながらないでしょうね。

さて、最後に彼女が参加したMaterialのMemoriesを紹介します。Materialは1980年代前半にベーシストでプロデューサーのビル・ラズウェル(Bill Laswell)を中心に結成されたグループで、まだ有名になる前のWhitneyが聞けます。One Downというアルバムに収録されています。ラズウェルはマテリアルの他に、プラクシス(Praxis)、ペインキラー(Painkiller)のメンバーでもありました。メジャーシーンではハービー・ハンコック(Herbie Hancock)のアルバム、フューチャーショック(Future Shock)をプロデュースして、その中からロックイットをビルボードチャートに送り込んだり、ミック・ジャガー(Mick Jagger)のソロアルバムのプロデュースを手掛けたりもしていました。アメリカのアンダーグラウンドな音楽シーンの顔役的な人ですね。Memoriesでのホイットニーは大仰なところなく、この路線でいけば良かったのになあと思うのですが、それだと大ヒットはしないかもしれないので、なんとも言えないのですが。要は、別の可能性もあったということが言いたいだけです。

ここの書き込みがけっこう泣かせます。Whitneyのこの曲だけが好きな人って案外いるもんですね。