熊切和嘉・桜庭一樹 「私の男」

「私の男」は桜庭一樹の同名小説を映画化したもので、主演は浅野忠信二階堂ふみの二人、監督は熊切和嘉。数週間前、初めてこの映画を見たとき、映像と編集の力なのかもしれないが、あっという間に2時間が過ぎてしまい上映時間の長さをほとんど意識しなかった。しかし、400ページを超える原作を設定はほぼ忠実とはいえ、2時間程度の映画に凝縮したせいか、わかりにくいところがいくつかあり、その後原作小説を読むことでいくぶんか解消された。ちなみに原作では、現在から過去に向かって時間が流れていくが、映画はその逆の構成をとっている。映画の冒頭の部分は流氷の間を花(二階堂ふみ)が泳いで海岸に到着するところから始まるが、これは花が高校生の時の話で、この数分のショットとともに音楽が流れ、それから時間が一挙に遡り、それから後は時系列的に未来へ向かって時間が流れていく構成となっている。

原作では、登場人物の独白や心理描写等もあり、それぞれの人物の行動原理や性格を理解しながら読み進めていくことができるが、映画は登場人物の行為を映し出しているだけで、行動の背景を推測しながら見ていくしかない。ナレーションやセリフが原作に比較すると最小限に抑えられており、映画を見ているだけではわかりにくいところがいくつかある。もちろんこれは監督の編集能力というよりも時間的な制約のせいだろう。原作と比べると、登場人物の言動や映像が誇張され過ぎている点も気になった。

原作小説を読み始めてから、映画をもう一度見直してみると、最初見たときにわからなかったことがよくわかった。しかし、小説に比べると深みに欠けるという気がしないでもない。映画のサウンドトラックはジム・オルークによるもので、映像に寄り添って過剰な自己主張をすることなく、本当に必要だと思われる場面だけに使われている。スコアは基本的にオルークの手によるものだが、ドヴォルザーク交響曲第9番「新世界から」第2楽章の印象的なメロディが何度か奏でられる。

サウンドトラック演奏
ジム・オルーク
石橋英子
浜島俊明
山本達久
藤森義昭

「私の男」公式ウェブサイト: http://watashi-no-otoko.com/
「私の男」(Twitter): https://twitter.com/watashinootoko
「私の男」(Qetic): http://www.qetic.jp/video/watashinootoko-140702/115043/
熊切和嘉・宇治田隆史ウェブサイト(nicolo): http://www.nicolo.jp/index.php
桜庭一樹公式ウェブサイト: http://sakuraba.if.tv/

「私の男」海外予告編

「私の男」メイキング映像

二階堂ふみインタビュー

熊切和嘉監督インタビュー