Room 237(キューブリックのシャイニングを分析したドキュメンタリー)

"Room 237"はStanley Kubrick(スタンリー・キューブリック)がStephen King (スティーブン・キング)の小説を映画化した"Shining"(邦題「シャイニング」[1980年])を5人の識者が分析するドキュメンタリー。あまり期待せずに見始めたのだが、映っている映像から読み取れることを執拗に細かく分析していくことで、無意識的に何か引っかかりがあるがそれが何か漠然としていたところが実は計算されて撮られていたことがわかり、腑に落ちるところが多くあり、最初から最後まで集中して飽きることなく見ることができた。映画のパンフレットに寄稿している浜野保樹は、キューブリックの前作「バリー・リンドン」は別の企画「ナポレオン」が形を変えたものであり、ここまでやるかといったぐらいに「ナポレオン」の歴史・風俗・背景に関して徹底的な調査を施したと指摘している。このことから、映画「シャイニング」の場合も同様に徹底的な調査が行われたと考えられるわけで、このドキュメンタリーでも指摘されていることだが、画面に映っているものは偶然そこにあったものではなく、全て計算されたものであると考えるべきであるということだ。例えば、それは壁に貼ってあるポスターから、登場人物の来ている服のデザイン、ホテルの部屋の内装やその構造、これら全てに及んでいる。主人公の作家、ジャックが使用するタイプライターはドイツのアドラー社製であり、またホテルの料理長の背後の棚に置かれているふくらし粉のカルメットの缶詰であることは何を意味しているのか? この映画の中で、これらの謎が次々に解明されていく。20世紀は大量虐殺の時代であったことがこの映画の隠されたテーマになっており、そこが「シャイニング」分析の鍵でもある、ということだ。詳細は実際に映画を見て確認してほしい。

「シャイニング」は公開時に見ているはずなのだが、いつどこで見たのかはっきりと覚えていない。おそらく広島市内中心部の映画館だろうとは思う。Jack Nicholson (ジャック・ニコルソン)が演じる作家のジャックがどんどん狂っていき、タイプライターで"All work and no play make Jack a dull boy"と何度も何度も打ち続けるところとか、強く印象に残っているところもあるのだが、流石に細部はほとんど覚えていない。いちおうホラー映画ではあるのだが、何か無意識的に引っかかるところがあったのかもしれないが、何かすっきりしないまま記憶の底に沈殿してしまい、そのままになっていたところが、このドキュメンタリーを見ることで、ああ、あれはこういうことだったのか、と気付かされることが多くあった。近いうちにDVDで見直して、細部の確認をしてみたいと思っている。

Room 237 Official Website: http://www.room237movie.com/
映画「ROOM 237」オフィシャルサイト: http://www.room237.jp/