Woody Allen "To Rome With Love"

Woody Allen (ウッディ・アレン)の新作はローマが舞台となっており、アレン本人も主役ではないにせよ、役者として映画に登場する。似非インテリを揶揄するのはアレンの十八番ではあるが、本作ではそれが若い女優の卵なので、さほど辛辣ではない。Dian Keaton (ダイアン・キートン)とアレンが主演していた旧作の"Annie Hall" (「アニー・ホール」)を見たことがある人は覚えているかもしれないが、マーシャル・マクルーハンの権威と称する大学教授がマクルーハン本人に論駁されているシーンがあったが、あれに比べると皮肉っぽいところはあるが、攻撃的な表現は減っている。

アレンの作品らしく、客を選ぶところがあり、カミュドストエフスキー、イェイツ、シェリー、ガウディ、といった固有名詞ぐらいは押さえておくべきだろう。バルトーク弦楽四重奏曲とか、「影響の不安」("Anxiety of Inflence")[アメリカの批評家Harold Bloom (ハロルド・ブルーム)の著作のタイトル]なんかの言及もあった。フロイドの精神分析に対する揶揄もいつもの定番で出てくるが、アレン(映画の役はオペラの演出をする音楽ディレクター)の妻が精神分析医という設定になっているのが、この映画の笑えるところ。

知ったかぶりして似非インテリぶるのは、かつては若者の特権だったと思われるが、最近はそういう人はあまりいないようだ。映画は楽しく見ることができたが、笑うべきところで、誰も笑っていないのがつらい。ニューヨークあたりだったら、客席でドッと笑いが沸き起こるところなんだろうが。いくつかブログのレビューを見たが、文学作品の引用とか、精神分析に関する言及とかに触れている人はいなかった。

Woody Allen Official Website: http://www.woodyallen.com/
To Rome With Love Official Website: http://sonyclassics.com/toromewithlove/
Rôma de amôre (To Rome With Love) [IMDB]: http://www.imdb.com/title/tt1859650/
映画「ローマでアモーレ」公式サイト: http://romadeamore.jp/
ウッディ・アレン インタビュー (シネマ・トゥデイ): http://www.cinematoday.jp/page/N0052819
Woody Allen Interview (Collider): http://collider.com/woody-allen-to-rome-with-love-interview/
岡田温司フロイトのイタリア−旅・芸術・精神分析』(平凡社): http://repre.org/repre/vol4/greeting/index.html

"To Rome With Love" Official Trailer