blacksheep ∞メビウス

blacksheepの広島アステールプラザのライブに行って来た。場所は2階の中ホールで、さほどお客さんは入っていなかった。宣伝が行き届いていなかったということもあるのかもしれないが、無料でもあるし、もう少し入っても良かったんじゃないかという気がした。

8月発売予定の新作からの曲が中心で、一曲目は英国のニューウェイヴSF作家、J.G.バラードの短編小説のタイトルから取られた、「時の声」("Voices of Time")、2曲目はレイ・ブラッドベリの「たんぽぽのお酒」、というようにSF小説からインスパイアされたものが続き、唯一のカバー曲はバッハの「コラール・プレリュード(イエスよ、わたしは主の名を呼ぶ)BWV639」であったのだが、これは映画『惑星ソラリス』のサウンドトラックで使われていた曲で、これもSFに関係した選曲といっていいだろう。バッハの曲はタルコフスキーの映画の中の映像と見事に共振していて、終末論的な雰囲気を醸し出していた。

ライブの最初の2曲目までは、通常のフリージャズというか、バリバリ吹いているなあ、というぐらいの感じでしかなかったのだが、バッハの曲から俄然引き込まれていき、途中休憩を挟んで後半に入ったが、J.G.バラード組曲「終着の浜辺」・「時間の庭」・「結晶世界」、ブレードランナーのテーマ曲、そしてアンコールの「翼をください」で気がついたら終わっていたという、本当に充実したライブだった。ブレードランナーのテーマではDJまほうつかい、ことマンガ家の西島大介氏のピアノ連弾で、参加されていた。西島氏はSFマガジンで、"All Those Moments Will Be Lost in Time"という連載をされているようで、これは映画『ブレードランナー』で死の間際にルトガー・ハウアー演じるアンドロイドが言うセリフで、"All those moments will be lost in time like tears in rain, Time to die." (「こうした瞬間は全て、時の中に忘れられてしまう、雨に消される涙のように。死ぬ時だ。」から取られている。ブレードランナーファイナルカット版を含めて何度も見ているが、何回見ても、この場面には打ちのめされる。

最初にブレードランナーを見たのは、大学生の時で、当時広島駅ビル内にあったステーションシネマで、現在横川シネマの支配人である溝口氏が同映画館に勤務されていた時期と重なっていたのかもしれない。西島氏は横川シネマで時々モギリの手伝い等をされているようなので、そう言う意味でも、今日のライブは何か縁というか、つながりを感じさせるようなものがあったような気がしている。