Roxy Music "Heart Still Beating"

Roxy Music (ロクシー・ミュージック)の"Heart Still Beating"は1982年8月フランスのフレジュ(Frejus)でのライブを収録したアルバムで、アルバムタイトルは"While My Heart Is Still Beating" (Andy Mackey [アンディ・マッケイ]との共作で、ロクシー・ミュージック最後のスタジオアルバム"Avalon"のA面最後の5曲目に入っている)から取られている。"Heart Still Beating"は「まだ胸が高まっている(どきどきしている)」ぐらいの意味なんだろうが、Bryan Ferry (ブライアン・フェリー)が歌うと、「まだ心臓が鼓動している」という意味にも取れるような気がしてくる。ことばの意味は必ずしも固定されたものではなく、そこにゆらぎがあり、これをことばの弾性と呼んだ言語学者もいたが、ことばの意味は最終的にはコンテクスト(文脈)によって決まる。しかしながら、ことばの発せられる文脈の意味も発話者や聞き手の解釈に依存しており、一義的に決定されるわけではない。文脈(この場合歌詞と言うべきかもかもしれないが)多義性を持たせることができるのは、パフォーマー・アクターとしてもブライアン・フェリーの得意とするところで、それこそが初期のロクシー・ミュージックが標榜していたRe-Make, Re-Model(リメイク・リモデル)なのではないか。皮肉なことに、フェリーのソロアルバムでの既存曲のカヴァーの方がロクシーよりもリメイク・リモデルが徹底している。興味を持たれた方は、フェリーのソロ作、"These Foolish Things", "Another Time, Another Place", "Taxi"あたりを聞いてほしい。

"While My Heart Is Still Beating"

"Impossible Guitars"