Abbas Kiarostami, Ella Fitzgerald "Like Someone in Love"

Abbas Kiarostami "Like Someone in Love"
映画公式サイト: http://www.likesomeoneinlove.jp/index.html

Abbas Kiarostami (アッバス・キアロスタミ)監督の最新作「ライク・サムワン・イン・ラブ」は, デートクラブ嬢明子(高梨臨), 元大学教授タカシ(奥野匡), 明子の恋人で自動車修理工場を経営する青年ノリアキ(加瀬亮)の3人が中心となって展開する映画で, 日本で撮影されている。フランスと日本の合同で制作されているが, 前編日本語の日本(語)映画。長回しが多いのと, セリフ回しがわざとらしくなく, 自然なところが特徴といえるかもしれない。監督は俳優にあらかじめ台本を渡さず, 当日撮影する部分だけ渡して撮影したらしい。これは,俳優に演じる人物に対する先入観を与えて,そのことにより,ある特定の人物像を作って演じるのではなく, そのときどきの気分や感情で演技することを求めたからではないかと思われる。映画のタイトルはジャズのスタンダードから取られており, この映画ではElla Fitzgerald (エラ・フィッツジェラルド)のバージョンが使われている。車のバックミラー越しでの会話はテヘランの女性タクシー運転手が主人公の「10話」(2002年)を思い起こさせる。そういえば,ヴィム・ヴェンダース監督の「パリ・テキサス」にもミラー越しの会話は多様されていたような気がする。映画は唐突に余韻を残さずに終わる。あたかもそれが人生であるかのように。

Ella Fitzgerald "Like Someone in Love"

高梨臨 インタビュー