Masabumi Kikuchi Trio "Sunrise"

昨日の朝、FM放送で、ピーター・バラカンの「ウィークエンド・サンシャイン」http://www.nhk.or.jp/fm/sunshine/を聞いていたら、The Bandhttp://theband.hiof.no/index_17-04-2012.htmlのドラマー、Levon Helmレヴォン・ヘルム)の訃報ということで、"The Weight"をかけていました。"The Weight"http://theband.hiof.no/articles/the_weight_viney.htmlはThe Bandのファーストアルバム"Music From Big Pink"に収録されている曲で、ロッククラシックの定番になっているような有名な曲ですね。放送では"The Las Waltz"に収録されているライブ演奏が流されていました。

Levon Helm & Friends "The Weight"

ジャンルは違いますが、ジャズドラマーのPaul Motionも少し前に亡くなりました。おそらく遺作になるのではないかと思われるアルバム、菊地雅章トリオhttp://www.cyborg.ne.jp/~poo-sun/の"Sunrise"が少し前にECMからリリースされたばかりです。このアルバム発売は2012年ですが、2009年9月にニューヨークのAvatar Studiosで録音されており、ライナーには菊地さんの追悼文が掲載されています。輸入盤で購入したので、原文(日本語)を英語に翻訳した形で載せられていました。もしかしたら、日本盤には日本語原文が載っているのかもしれません。

二度目の見舞いの時には既に、ポールは末期患者の緩和病棟(palliative unit)に入れられていて、面会が許可されませんでした。最初に見舞いに行った時はビル・フリゼル(Bill Frisell)http://www.billfrisell.com/の奥さんと娘が看病しに来ており、彼らの好意的な計らいにより、二人きりで話をすることができました。しかし、その時には、残された時間がわずかしかなく、これが最後になるということがわからなかりませんでした。二度目の見舞いの時、'palliative'の意味がわからなくて、憤慨して「なんで顔も見れないのか」とその時は思ったのですが、自宅に戻って大型の辞書を引いて、やっと意味がわかった(末期の状態で面会謝絶だったということ)と、振り返っています。

このアルバムは静謐な中に異様な緊張感が同居する無駄のない作品で、あたかも音の響き一つ一つが吟味され、計算されつくされて鳴らされているような趣があります。タイトルも"Sunset"ではなくて"Sunrise"ですから、これからまだ始まるよ、まだ終わってはいませんよという意味合いがあるのかもしれませんが。

Paul Motionは日本ではポール・モチアンと書かれていることが多いのですが、英語版のウィキペディアhttp://en.wikipedia.org/wiki/Paul_Motianにも書かれているように、これは間違った発音で、正しくはモーシャン(His surname is Armenian, and is often mispronounced "Moe-tee-un;" however, Paul Motian pronounces it "MO-shun.")です。アメリカの公共ラジオ放送(NPR, National Public Radio) http://www.npr.org/2006/03/13/5256495/paul-motians-jazz-garden-of-edenのインタビューでもそのように発音されています。モーシャンはビル・エヴァンスキース・ジャレットポール・ブレイらとの共演でも知られており、特に"Waltz For Debby"を始めとするエヴァンスの初期の作品、その中でもベースのスコット・ラファロとのトリオが良く知られています。残念ながらラファロは若くして交通事故で亡くなります。このあたりの話はNPRのインタビューで聞けますが、他にも、ビル・エヴァンスに関するエピソードで、ジャンキーだったエヴァンスがブツが手に入らなかったため、2週間の予定が組んであったツアーを一日でキャンセルした話なども聞くことができます。


Paul Motion Trio "It Should've Happened A Long Time Ago"

菊地雅章トリオ "Ballad Ⅰ"